日々の薬剤師 相談業務時によくご相談いただく“不眠”に関する話題を前回に引き続きお届けします。
今回は不眠症に効果的な「サプリメント療法」について、詳しくご紹介したいと思います。
慢性不眠症の原因には生活習慣からや仕事・家庭環境など、様々な睡眠環境により複合的となっています。
慢性不眠症として認められる人における原因となる疾患診断の40%以上は、精神障害であることが近年分かってきています。
不眠症の管理には“原因となる疾患の診断と管理”が鍵を握ります。
他の原因としては「不適切睡眠衛生、内科・精神疾患、慢性ストレス、死別反応、さらに喘息やうっ血性心不全、糖尿病、甲状腺機能亢進症、胃食道逆流症、潰瘍、譫妄、パーキンソン病、不穏下肢症候群、睡眠時無呼吸症、更年期障害」などの医学的状態が認められています。
二次性睡眠障害にも不眠症が含まれますが、このカテゴリーに該当する患者には精神病や気分・不安障害などの精神障害や認知症、パーキンソン病などの神経疾患、あるいは慢性肺疾患が原因の疾患とされています。
ホップ(Humulus lupulus: 和名セイヨウカラハナソウ)は、アサ科の仲間で北アメリカ・ヨーロッパおよびアジア全体の湿地で見つかる蔓性の多年生ハーブのことです。
雌花や球果には腺毛があり、精油に富み、薬として使用される部分で、醸造業においてビールに苦味を与えたり、睡眠障害、情緒不安、緊張、興奮などに広く使用されています。
鎮静・催眠作用はin vivoでの2‐メチル‐3ブテン‐2‐オールという揮発性産物によるものと考えられています。
この揮発性産物を吸入すると催眠作用を引き起こす能力があります。
生のホップにはこの成分が微量しか含まれていませんが、2‐メチル‐3ブテン‐2‐オールの濃度は乾燥後、上昇し続け、室温保存で2年以内に最大値(約0.15%)に達することが明らかにされています。お茶、入浴剤にすることで、この化合物の薬理学的関連性がある濃度へと到達します。
◇レモンバーム
レモンバーム(Melissa officinalis L.)は、シソ科(Laminaceae)の仲間で地中海、ヨーロッパ、北アフリカおよび西アジアに自生する多年生ハーブです。
シソ科に属し、葉は押すとレモンの良い香りを放ち、ハーブ療法として使用されています。
穏やかな不安緩解作用、鎮静作用または催眠作用を有するハーブとして、また他のハーブと配合されて使用されています。
他の用途に鎮痙作用、駆風作用、制吐作用、抗菌作用、抗ホルモン作用、発汗作用などがあります。
葉の主成分はシトロネラール、シトラールaおよびシトラールbのほか、他のモノテルペンとセスキテルペンを含む精油です。
他にもシソ科特有のタンニン、例えば苦味成分のトリテルペニル酸(triterpenylic acid)やフラボノイドなどの成分を含んでいます。
精油抽出物は動物モデルの摘出平滑筋に鎮痙活性や弛緩活性を及ぼします。
水アルコールエキスをマウスに腹腔内または経口投与した場合について検討した研究は限られていますが、催眠鎮静効果が示されています。
◇メラトニン
メラトニンはトリプトファンというアミノ酸から松果腺によって脳で作られる神経ホルモンです。
メラトニンの合成と放出は暗闇に刺激され、光に抑制されるが、このことは概日リズムと様々な身体機能の調整にメラトニンが関与していることを示しています。
血中メラトニン値は就寝前に最大になります。
また、メラトニン分泌は加齢とともに変化し、1~3歳児の夜間濃度が最大です(~250pg/ml)。
年長児(8~15歳)の夜間濃度は平均約120pg/mlで、この後、低下し始め、高齢者(50~70歳)で約20pg/mlになってしまいます。
メラトニンが最もよく用いられるのは不眠症と時差ぼけです。特に老年の不眠にはすすめられています。
L‐トリプトファンや5‐HTPのサプリメントも作用メカニズム的には考えられるが、副作用のEMSのリスクが高く、安全性が低いため、あまりお勧めできません。
メラトニンがヒトで眠気を引き起こす基本的な機序は不明です。
メラトニンは概日リズムに位相シフト効果を及ぼし、体温調節機構を介して睡眠挙動に影響を及ぼす可能性があり、脳の睡眠を誘発する構造に直接作用します。
夜間体温の低下の約40%は夜にメラトニン濃度が上昇するためです。
核心体温を低下させると睡眠が促進されることが証明されています。
様々な中枢および末梢組織に特定のメラトニン受容体が広く分布しています。
それらはcAMPの蓄積を抑制し、Sackらは、メラトニンの睡眠促進効果は視床下部の視交叉上核のメラトニンMEL 1a受容体に仲介され、視交叉上核でのペースメーカーの位相シフトを介するか、あるいは視交叉上核依存性の皮質および行動の活性化の低下を介するかのいずれかであるとの見方を示していました。
メラトニン値は一部の不眠症患者で正常値より低いことが分かっています。
◇バレリアン
カノコソウ属には数百もの種があります。
オミナエシ科のバレリアンは、その根や根茎が穏やかな鎮静・催眠薬としてよく使用されています。
乾燥すると強烈な独特の不快臭を放ち、ヨーロッパと北アメリカの牧草地や森に生育、ヨーロッパ、日本、ロシアで栽培されています。
バレリアンの根や根茎には様々な成分が特定されており、そのうちの多くが薬理特性を有しています。
精油はモノテルペンとバレレン酸などのセスキテルペンから成るが、生物活性が高い化合物の一つです。
バルトラートやイソ吉草酸などのバレポトリアートは薬理活性を有するが非常に不安定であり、最終製品に含まれ、全身に吸収される可能性は低いです。
バレリアン抽出物によって抑制性γ‐アミノ酪酸(GABA)受容体が中枢神経系で刺激されるが、正確な作用は不明で、関与している機序は一つにとどまらないとみられています。
バレリアン抽出物ではGABA濃度がかなり高いものの、GABAは血液脳関門を通過しないです。
このような不眠に対し効果的なサプリメント療法に関しては、薬剤師業務における患者様への知識提供として、特に喜ばれる内容です。
具体的に有効なサプリメントの名前/種類をお伝えすると共に、何故有効なのか?の成分や効果も合わせてご説明すると、より説得力が増し、患者様からの信頼度も向上するためお勧めです。